有機JAS認証と無農薬について
Share
店長は日本中はもちろん、世界中のカフェやロースターのサイトをチェックしています。そして、それらの中で「お、これはいいな」と思った表現方法などについて当店にフィードバックして改修を続けています。今この瞬間も裏側では何やらコードを書いていたりします。
そんな中「当店は有機JAS認証工場です」といった記述をしているお店を見つけました。おお、有機JAS。日本の農業規格に合致した製品を作っていますという非常に厳格な仕組みです。これを名乗ることができればお客様にも安心安全な商品をお届けできるかも…と取得から運用に至るまでを様々検証した結果、コーヒー豆のお値段がものすごく値上がりしそうな雰囲気を感じ取って「また今度にしよう」ということになりました。
当然焙煎ラボでは食品衛生法に則った資格を持った店長がHACCPに準拠した衛生管理をやっております。ので、有機JASじゃないからといって品質が劣る製品を出しているわけではありません。
有機JASは豆の農場で禁止された農薬を使わずに育てた製品(すごくざっくりですが)に対してつけられます。これを有機JASのまま焙煎豆として世に出すには、輸送、製造のプロセスにおいても禁止された農薬が紛れ込むことがあってはなりません。そのため、インポーターが有機JAS付きで仕入れたコーヒー豆を小袋に分けた段階で、その豆は有機農法で育てられたにもかかわらず、有機JASと表示することができなくなります。なぜならインポーターの小分け設備は有機JASじゃない豆も取り扱いますから"可能性の話として"農薬の混入があるかもしれないからです。
有機JASを有機JASのまま焙煎豆で売られているお店は本当に頭が下がります。
では、有機JASでない工場で焙煎した豆は有機栽培ですよーと表現してはいけないのでしょうか。答えはダメです。まあ、想像すればわかりますよね。厳格に決められた規格に沿っているものとそうでないものが、同じ「有機」を名乗っていいわけがありません。しかし、下記のような表現は消費者の誤解を招かないと考えられるのでOKとされています。
有機JAS認証生豆を使用しています
ただしこれでも有機JAS工場で作られていないなら、有機JASマークをつけることはできません。
有機やオーガニックという言葉は使用できません。さて。ここへ来て「農薬不使用」ってことは「無農薬」って書いてもいいんじゃないかという思いがよぎります。
が、無農薬という表現は消費者に対して優良誤認の恐れがあるため、使用することができないと法律で決まっています。なのに、無農薬って表現はものすごいカジュアルにあちこちでされているようです。
有機栽培といっても農薬を使っていないわけではありません。農場が「ウチは農薬を使ってない」と言っても、隣接する圃場から農薬が風に乗って運ばれてくる可能性は否定できませんし、無農薬を証明する規格も機関もありません。ですから、無農薬っていうのは物理的に不可能な話だから、使用するのはやめておきましょうねという話になります。
じゃあ、どういう表現ならOKなのか。こんな感じみたいです。
栽培期間農薬不使用
農薬不使用と無農薬の違いは、店長的に解釈するならば、不使用は「使っていないけど入っているかもしれない」無農薬は「農薬は使ってないし入ってもいない」と言うことだと思います。使ってないことを証明することは簡単ですが、入っていないことを証明することは非常に難しいです。似た表現ですがその意味は全然違うことがわかると思います。
一括表示と呼ばれる「賞味期限は○○に記載」とか保存方法などを説明した部分に栽培期間農薬不使用と表記しておけば、商品名などに農薬不使用などの表現はできるそうです。ものすごい難しい問題であるので、実際やるならJAS法に詳しい方に助言をもらうなどした方がいいと思いますし、店長的には一括表示に書いてるからといってお客様が誤認するような表現はしたくないなーって思います。
当店のお豆は信頼できるインポーターから仕入れられたものを使用しています。少なくとも、残留農薬が検出できる限界以下であることは検査によって証明されています。そもそもですが、食品としてヤバいものを売ることは小売店にとってもインポーターにとっても一撃で終了するインパクトのある問題になりますから、信用していただいても大丈夫かなと思います。
これからも当店では衛生管理を徹底しつつ、皆様に安心して楽しんでいただけるコーヒー豆を提供し続けます。